第3祝福独立研究所 です
情報マガジンを添付します。
Contents
- 1 <陸と海の空論>海の中の音; ほとんどの魚も聴覚を備えている
- 2 <海洋特記>海の小さな巨人 ─ カイアシ類
- 3 <環境特記>世界最高のエネルギー変換効率を実現したフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発
- 4 島国の中の島である淡路島
- 5 <サモア>伝統的薬物植物(マタラフィ)に医学的効果発見
- 6 <マダガスカル>尚続く南部の飢餓 干ばつ状況
- 7 <インドネシア>森林破壊 2030年までに終わらせる COP26 署名批判
- 8 <モルデイブ>経済ハブのセンターとしてアドウ市を開発する政府
- 9 <太平洋特記1>横行する賄賂は政治腐敗の元凶
- 10 <太平洋特記2>IUU(違法、無規制、無報告)漁業への共同監視(クルクル作戦)終了
- 11 <太平洋特記3>気候変動会議COP26: 海の温暖化がマグロ資源による歳入に大きな変化
- 12 編集後記
<陸と海の空論>海の中の音; ほとんどの魚も聴覚を備えている
陸上の人間社会では、様々な音を発している。
工事現場、自動車、話し声等々。
自然界でも、鳥が鳴き、風が吹き、 動物が鳴く。
一方、海の中は静寂そのものの様な感じがするが、事実そうではない。
クジラが数千 km も届く声を発し ていることは知られているが、小さなエビや魚まで、独自の音を出し、又聴覚を備えて、捕食魚の敵の音を聞き分けて警戒するとは余り知られていない。
1990 年代末から今世紀から、海中の音の研究が進み始めている。
通常、海の 中から発せられた音は、陸上では聞こえない。
海の中も音であふれているという。
近年は、船舶が増え、それらの発す る音源が急速に多くなっている。
海中音の調査により、1000mから1500mの間に音源が伝わりやすい層があることが 分かった。
海中生物がそれをどの様に利用、関係しているかは未だ分かっていない。
地上の騒音問題がある中、海の世界でも、魚や海中動物にとって、環境騒音が増してきた時代になったものだと感じているのかもしれない。
洋上 風力発電設置の杭を打ち込む作業、貿易船舶の往来頻度の激増、など海中生物の音によるコミュニケーション疎外を起こしている可能性もあり、捕食者から身を護る危険性が増 大している可能性もあり、海中における騒音問題も、海中生物の 立場に立って、研究調査し静音化してゆく対処が必要になってき ている。
国際海事機関(IMO)でも、議論が活発化しており、米国 の海洋大気庁(NOAA)は、海産哺乳類に限ってだが内耳へのト ラウマが残る音暴露レベル基準を公表している。
だが、魚類を含 む多くの海洋生物に対する基準は制定されておらず、国際的な合意もできていない。
必要とされているのは、海中騒音のさまざまな生物種への影響を科学的にしっかりと知り、適切 に管理していくことである。
今年から、海洋音響学会が中心となって海中騒音の評価方法に関するガイドラインを作 成すべく、研究部会が発足した。全体として、地球の生物全体社会にとって、共に棲みやすい世界を作ってゆくこと が根本思想でなくてはならない。
全体への配慮するのが人間の責任と言うべきであろう。
From (公財)OPI 海洋政策研究部部長◆赤松友成 Ocean Newsletter 抜粋, 参照筆者加筆
<海洋特記>海の小さな巨人 ─ カイアシ類
[海洋政策研究所 Ocean newsletter No.510号より]
カイアシ類は、全世界の海に分布する動物プランクトンである。
地球上で最 大のバイオマス(生物量)がある動物といわれ、多くの魚の最も重要な餌と なって人類の食を支えている。
植物プランクトンが表層で固定した大量の炭 素を深海へ輸送する役割も果たしており、目立たないが人類にとって非常に重 要な「海の小さな巨人」である。
カイアシ類(学名コペポーダCopepoda) はエビと同じ甲殻類の仲間で、地球上の水界のほとんどあらゆる場所にいる動物だ。
海洋では動物プランクト ンとして海面から超深海まで分布し、大きさは成体で 0.3mm から 10mm 程度、寒海では5mm 以上の大 型種、暖海では 1~2mm の小型種が優占します(図)。
カイアシ類のバイオマス(生物量)は、網目 0.3mm の ネットで採集される動物プランクトンの通常 75%以上を占め、地球上最大のバイオマスがある動物といわれ ている。
最近の情報によると、全海洋の水深 200m までの表層中型動物プランクトンのバイオマスは、炭素ベース で海水 1l当たり平均 5.9μg と計算されています。
海洋全体では 4.2 億トン、生物体の湿重量に換算すると 105 億ト ン、カイアシ類はその 75%としても約 80 億トンです。
その量がどれほど膨大かは食物連鎖における消費量の大きさ で実感できる。
植物の年間生産量は炭素ベースで陸上全体が 600 億トン、海洋全体が 500 億トンとされ、地球上の植物生産の半分近くは海で行われています。
海の植物生産を担うのはほとんどが植物プランクトンです。動物プランクトンは植物プランクトンの生産量に匹敵する量を消費しています。
膨大なバイオマスがあるカ イアシ類が動物プランクトン食魚類にとって最も重要な餌生物である。
世界最大の魚であるジンベイザメ、そ して史上最大の動物であるシロナガスクジラもプランクトン食です。
シロナガスクジラが属するヒゲクジラの 仲間の主な餌は、大型動物プランクトンであるオキアミや小魚の群れだが、時には巨大な胃が大型カイアシ類 で充満した個体が捕獲されることがある。
魚類資源量がカイアシ類量と相関することは昔から繰り返し明らか にされている。
近年、漁獲量の減少は、カイアシ類密度の低下が原因であると考えられている。
カイアシ類は、 現在もっとも深刻な地球環境問題である地球温暖化にも深く関わる動物だ。
表層の炭素は植物プランクトン の光合成によって年 500 億トンが固定され、そのうち 110 億トンが深層へ移動するため、表層の CO2 濃度 はそれほど急激には上がらない。
生物によって物質が移動する現象を「生物ポンプ」というが、そこで大きな 役割を果たしているのがカイアシ類だ。
大規模鉛直移動するカイアシ類も表層の炭素を深海へ輸送する働き をしている。
それらのカイアシ類の分布量から計算すると、北太平洋全体の深海への CO2 輸送量は年 5.9 億 トンと見積もられ、それは日本の年間 CO2 排出量(2019 年度 12.1 億トン)の半分近くにあたる。
カイアシ 類は、海の生態系を支え、人類にとって縁の下の力持ちといえる重要な生物といえる。
カイアシ類への深刻な 悪影響が、人類にとってのさらなる環境悪化に繋がることも懸念される。(了)
From 高知大学名誉教授◆上田拓史 Ocean Newsletter 11 月
<環境特記>世界最高のエネルギー変換効率を実現したフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発
[東芝HPより]
東芝_2018 年にも、本誌でも紹介したが、既存のパネル型太陽光電 池の発電効率に匹敵する15.1%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率を達成したと東芝が 9 月に発表した。
フィル ム型なので、軽量、折り曲げ可能なので、様々な設置場所が可能とな る。
技術開発により、生産プロセスの高速化と変換効率の高度化の両 立で発電コストの低減化が期待できる。
フィルムは、世界最大の703平方cm。今後実用化サイズである900
平方cmと変換効率20%を目指して更に、進化する必要があるという。
島国の中の島である淡路島
古事記によれば、日本の国生みの中で、最初にできたのが淡路島だ。
奈良時代には水軍が 形成され、初期の天皇家とのつながりもあったらしく、反正天皇の出身地ともされ、皇后 も淡路から迎えたこともある。
平安時代には、御食国と言われ、皇室に貢物をする地であった。
江戸時代は、船による物産移動の手段であった北前船の寄港地、船主集落地でもあ り、その都志浦は、集積地として栄えた。
特に、高田屋嘉平衛は淡路島に生まれ、北前船で 北海道・本州の物産を大阪に運び豪商となった。
高田屋嘉平衛は、函館に商売の支部を置 き、函館の町作りの基礎を作った。クナシリ、エトロフ島航路を開拓し、樺太にも開拓した。
クナシリ沖で、ロシア船に捕まったが、日ロ間の問題を解決 し、淡路に帰国。港湾の修築その他公共事業や郷土の為に 尽くした。
明治時代、初代兵庫県知事となった伊藤博文が淡路を兵庫県に組み入れた。
<サモア>伝統的薬物植物(マタラフィ)に医学的効果発見
サモアでマタラフィとして知られている薬用植物サイコトリア・インスラームは、小さな白い花と光沢のある赤い果実を持つ高さ約 2m の小さな木で、異なる形態の炎症を治療するために使用される。
サモアでは、何百年も使用してきた伝統的な薬剤の植物である。
それについて、研究者は、植物が発熱、体の痛み、腫れ、創傷、 皮膚感染症だけでなく、呼吸器感染症に関連する炎症を治療するために使用されると言う。
ニュージーランド の大学研究者が、マタラフィが炎症を下げる根本的な分子メカニズムを発見した。
From 発見 November、2021 Independent &PAC, PINA news
<マダガスカル>尚続く南部の飢餓 干ばつ状況
マダガスカル南部のある村で医療活動している医師の証言によれば
「ここ4 年雨が 降らず、土地は不毛の灰色化しており、村人はまともな食べ物も無く、サボテンの葉 を食べている」
と言う。
マダガスカルの気候が変わってしまった。
通常、雨季にキャッ サバなどを植え食料としているが、ここ数年ほとんど雨が降らず、これが飢餓になる 理由で、特に子供であり、未だ悪いことが起きるとされる。
この飢餓状態に接し、医師は
「妊娠している女性や乳児を医療的に面倒を見ている。彼らと話せばどれだけ空腹かをしることができる・彼らは何も 食べるものがなくて来ている。
何人かは診てもらうのに待つこともできずに食べ物を探す為に出て行ってしまう。多くの人は 来ることもない。誰でも余りにも空腹であれば、20kmも診療所まで歩いて来ない。歩く事さえ怖れている。
診療所は、彼ら に何も食べるものを与えられない」。
政府や国連援助機関が水を供給する計画があっても、未だ実現に至らない。
政治的 に混乱もあって、マダガスカル南部には、救済、援助が見逃されている地域がある。
From UN;WFP, The Guardian, 匿名医師その他
<インドネシア>森林破壊 2030年までに終わらせる COP26 署名批判
インドネシアの環境大臣は、COP26 で100か国以上が署名した 2030 年までに森林破壊を終わらせ、ゼロにすることを強制することは、明かに不適切で不公平ある」と批判した。ジョコ大統領は、この協定に署名した が、森林大臣は、「開発は、尚インドネシアの最優先事項であり続ける」と述べる。「「森林を含むインドネシアの 自然の富は、公正であることに加えて、持続可能な原則に従ってその使用のために管理されなければならな い」と森林大臣は言う。昨年も大規模な森林火災が北米、アマゾン、オーストラリア、ロシア、などであり、熱帯 雨林が CO2 の吸収源であり、酸素の供給源あることも地球生命にとり重大な保全課題であることと如何に 調和せるかが世界の課題、国連での討議の課題であり続けることは確かである。 *インドネシアは、また広い泥炭地をもつ国として、泥炭地(ピートランド)が蓄積している CO2 が火災や自然発出より大気中に排出される問題がある。2018 年 3 月、インドネシアとコンゴ盆地の国々は、泥炭地のより 良い管理と保全を促進する歴史的合意であるブラザビル宣言に署名した。これに続いて、国際熱帯泥炭地セ ンター(ITPC)が立ち上げられた。
From November 4, 2021, Jakarta Post 参照
<モルデイブ>経済ハブのセンターとしてアドウ市を開発する政府
経済大臣は、
「政府は、南端のアドウ市を最初の経済センターとして開発を行って いる」
と、ある観光会社の式典で話した。
この式典で大臣は、「モルジブ経済を分散 化することは、政権の高い優先事項である。
この取り組みより、経済特区が確立さ れることになる」という。政府は経済ハブとしてアドウ市を開発することを願い、 目下進行中である。
国際空港を建設し、水道や衛生システムを整える取り組み、観 光分野を拡大することが進んでいる。
目標は、首都マレへの依存を軽減することで あるとも言う。
パンデミックの結果してアドウ市のリゾートの閉鎖は、環礁国家経 済に非常に影響しているが、政府は、この課題の解決を求めている。
From Nov 7, 2021 Avas
(都内文京区の六義園;筆者撮影)
<太平洋特記1>横行する賄賂は政治腐敗の元凶
社会の透明性を調査する国際組織が太平洋の6000人に調査した結果、太平洋諸島地域の 3 人に 1 人が昨年、公 共サービスを利用する際に賄賂を支払ったが、過去 5 年間に 4 分の 1 の人々が投票に対して賄賂を受け取った。
キリバス、パプアニューギニア、ミクロネシア連邦(FSM)は、賄賂を支払った人の割合と投票のために賄賂を提供され た人々の割合の両方でトップに立っている。
報告書は、調査対象者の 15%が、特定の方法で投票しなければ報復の 脅威も受けたと答えている。
人々が賄賂を支払った最も一般的な公共サービスは、医療と教育で、その他は、文書 を発行する官庁、水の提供者、衛生または電気サービス、警察、裁判所が含まれる。
回答者の地域全体で 38%が、 過去 5 年間に、公式サービスと引き換えに性的な行為を強要する事を経験したと述べている。
フランス領ポリネシア で最も高い性的強要率が報告され、回答者の 92%がこの形態の腐敗を経験したと答え、ニューカレドニア(76%)とパプ アニューギニア(51%)が続いた。
PNG の専門家よれば、ソロモン諸島とパプアニューギニアでは、97%と 96%がそれぞ れ政府の腐敗が大きな問題であると考えている。
2020 年、キリバスの大統領、サモアとクック諸島の首相、他の太平 洋諸国の閣僚や腐敗防止当局者がキリバスで開催された第 1 回太平洋地域腐敗防止会議に出席し、腐敗に取り組むビジョンに合意した。
<太平洋特記2>IUU(違法、無規制、無報告)漁業への共同監視(クルクル作戦)終了
11 月 4 日に、世界最大の漁業監視活動の 1 つである クルクル作戦は、太平洋での違法、規制されていない、報告 されていない(IUU)漁業を対象とした 12 日間の国際協力監視活動を成功裏に終えた。
この作戦は、オーストラリア 海軍、フランス海軍、米国沿岸警備隊の 5 隻の船と一緒に運航する太平洋諸国からの15 隻の警備艇とパシフィッ ク級哨戒艇、そしてソロモン諸島、サモア、パプアニューギニア、ニュージーランド、トンガの水産関係職員 24 名を 含め、7機の航空機と衛生監視システムを用いて行われ、多数の監視対象船を発見した。
作戦の監視活動範囲は、 15 の太平洋島嶼 FFA メンバーの排他的経済水域と隣接する公海で行った。
従来、違法漁船の主力は、中国船で あり、インドネシアは、違法漁船に対し、沈没、没収など厳しい対処で臨んでいる。
From November 7,2021 太平洋漁業機関(FFA)
<太平洋特記3>気候変動会議COP26: 海の温暖化がマグロ資源による歳入に大きな変化
COP 26 でのイベントで、30年もしないうちに、海の温暖化が中部西太平洋 の島国;ミクロネシア連邦、クック諸島、キリバス、ナウル、パラオ、パプアニ ューギニア、マーシャル諸島、ソロモン諸島、ツバルなどのマグロ依存の島 国に大きな影響を与えることになる。
マーシャル諸島政府は、
「わが国民か らマグロにとって代わることなど考えられない。マグロは、我々の生活であり、文化だ」
と説明した。
*キリバス政府は、フェニックス島にカリフォルニア州程の海洋保護区を2015 年以来設けて商業漁業を禁止していたが、この度、それを開放することを決定した。
キリバスは、年間70万トン 程のマグロの捕獲があり、海洋保護区の設置は、同国のみならず、中国と国交を結んだことで、中国からの開放要求 があるのではとの疑念が生じている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
編集後記
海洋状況把握(MDA=Maritime Domain Awaewness)は、2001 年 9 月 11 日の同時多発テロ事件を 契機に米国ではじまった取り組みであり、国家レベルの問題(防衛、安全、経済等)に影響を与えうる海洋情報を、関 係政府機関で効果的に共有するための仕組みである。
我が国においては、4 年前の平成30年に会威容総合政策として決定され、
1.海洋を見る「目」の強化、
2. 情報をつなぐ「神経」の強化、
3. 国際的なネットワークの強化
の3つのアプローチを通して、MDA の総合的な能力を強化し、海洋の「可視化」を一層向上させようとしている。
防衛安全上、台湾をめぐる中国の動きは、正にその最重要事項であり、海洋国家日本の重要な課題と言える。
以上